発注後のキャンセル・内容変更・取消料:契約の種類ごとの原則と、先に書いておく条項

発注書や見積書に取消の記載がないときは、請負・準委任・売買という契約の種類ごとの原則に戻ります。手付、取消料、着手後の実費をどう書いておくかを、事業者間の取引を中心に整理します。

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取消の場面では、「どこまで進んでいたか」と「先に受け取った金銭が何だったか」が、負担を分けます。

このページの要点

  • 取消の条項がなければ、請負は損害を賠償して解除(民法641条)、準委任はいつでも解除(民法651条)、売買は手付による解除(民法557条)が原則。
  • 「取消」「解除」「撤回」「キャンセル」は意味が違う。契約書で、対象の時点と効果を定義して使う。
  • 手付・前払金・着手金は名目だけで効果が決まらない。取消料は賠償額の予定(民法420条)として、時期ごとの損害に基づく説明ができる形にする。
  • 着手後は実費その他の合理的な費用を負担する書き方が多い。個人が相手の取消料は、消費者契約法9条1項1号の平均的な損害を超えない範囲にする。

結論:取消の条項がなければ契約の種類の原則に戻る。取消料と着手後の実費は、先に書いておく

発注書を出したあとに「やはりやめたい」「内容を変えたい」となる場面は、どの業種でも起きます。反対に、受注した側が、発注の取消を受けて、すでに使った費用や確保した時間の扱いに悩む場面も、同じくらい多く見られます。このとき、見積書にも発注書にも取消に関する記載がなければ、当事者の取り決めはなく、民法が契約の種類ごとに用意している原則に戻って考えることになります。

原則は契約の種類ごとに違います。請負なら、注文者は完成前ならいつでも損害を賠償して解除できます(民法641条)。準委任なら、各当事者がいつでも解除できますが、相手に不利な時期の解除では損害を賠償します(民法651条)。売買で手付を渡していれば、相手が履行に着手する前なら、手付を放棄するか倍額を提供して解除できます(民法557条)。同じ「発注の取消」でも、支払うものの内容が大きく違います。

このページでは、取消の条項がないときの原則、「取消」「キャンセル」「解除」の言葉の整理、手付、取消料の設計、着手後の実費の書き方、個人(消費者)相手の取消料の枠、起きがちなことを順に整理します。事業者どうしの取引を中心に書き、個人向けは1つの項目にとどめます。

  • 取消の条項がなければ、請負・準委任・売買のどれにあたるかで、解除の仕方と支払う金額の考え方が変わる。
  • 発注書や請書には、取消・変更の時期ごとの扱い(着手前、着手後)を書く。着手後は実費その他の合理的な費用を負担する、という書き方が多くの契約書で見られる。
  • 手付は、受け取った名目と、実質が解約手付なのか前払金なのかで、扱いが変わる。
  • 取消料は、賠償額の予定として定めることができる(民法420条)。算定の考え方が説明できる金額にしておく。
  • 個人(消費者)が相手のときは、消費者契約法9条1項1号により、平均的な損害を超える部分は無効になる。

発注書の書き方は発注書(注文書)の書き方で、見積の途中変更と最終請求額は概算見積・一式見積・上限付き見積と最終請求額の食い違いで扱っています。ここでは、契約が成立した後の取消・変更に絞ります。

取消の条項がないとき:契約の種類ごとの原則

発注書や請書に取消の定めがないとき、まず確認するのは、その取引が民法のどの契約にあたるかです。名前(「発注」「依頼」「委託」)ではなく、実質で判断されます。

契約の種類ごとの解除の原則

請負

仕事の完成を約束する契約(制作物の完成、工事など)

  • 請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して解除できる(民法641条)
  • 賠償の範囲は、一般に、すでに支出した費用に加え、完成していれば得られた利益が含まれ得ると説明される
  • すでにした可分な仕事は、注文者が利益を受ける割合で報酬を請求できる(民法634条)

準委任

事務の処理を委託する契約(作業の提供、運用、支援など)

  • 各当事者がいつでも解除できる(民法651条1項)
  • 相手に不利な時期の解除、または受任者の利益(専ら報酬を得るものを除く)も目的とする委任の解除では、損害を賠償する。やむを得ない事由があれば別(同条2項)
  • 解除までの履行の割合に応じて報酬を請求できる(民法648条3項)

売買

物品を売り買いする契約

  • 手付を交付していれば、買主は手付の放棄、売主は倍額の提供で解除できる。相手が履行に着手した後はできない(民法557条1項)
  • 手付がなければ、一方的な取消の根拠はなく、債務不履行や合意解除の問題になる
  • 売買以外の有償契約にも、手付の規定は準用される(民法559条)

オーダーメイドの物品の製造など、売買と請負の性質が混ざる取引もあります。どの規定が当てはまるかは、契約の内容と取引の実態で整理します。

請負と準委任のどちらにあたるかで、取消の負担は大きく変わります。請負(641条)では、賠償の範囲に、完成していれば得られた利益が含まれ得るのに対し、準委任(651条)では、原則としていつでも解除でき、賠償が必要なのは相手に不利な時期の解除などの場合に限られます。成果物の完成を約束した契約か、作業の提供を約束した契約かは、契約書の表題だけでなく、報酬が完成と結びついているか、成果物を引き渡す内容になっているかなど、書かれた内容から判断されます。

反対に、受注者の側が「やはり引き受けられない」と辞退する場合は、別の問題になります。契約が成立した後に、受注者が債務を履行しないときは、発注者は相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ契約を解除できます(民法541条)。債務不履行によって損害が生じれば、その賠償を請求できます(民法415条)。受注者の側からの一方的な取消を許す定めがなければ、これらの責任を負うのが原則です。受注者の事情で辞退せざるを得ないときの手続(申入れの時期、代替の手配、費用の負担)も、あらかじめ書面に書いておくことが勧められる点です。

「取消」「キャンセル」「解除」「撤回」は同じ意味ではない

実務では、「取消」「キャンセル」「解約」「中止」などの言葉が混ぜて使われています。契約書の中でも、同じ言葉が違う意味で使われることがあります。まず、法律上の言葉を整理しておくと、書類の文言の意味が読み取りやすくなります。

取消に関する言葉の整理

言葉意味場面と注意
撤回申込みを取り下げること(契約が成立する前)承諾の期間を定めた申込みは撤回できない(民法523条1項)。期間を定めない申込みも、相当な期間は撤回できない(民法525条1項)。見積書の有効期限と関わる。見積書は申込みか、有効期限を過ぎたらどうなるかで扱っている
解除成立した契約を、一方的な意思表示によって解消すること解除の意思表示は撤回できない(民法540条)。債務不履行による解除(民法541条)、契約の定めによる解除(約定解除)、請負・準委任の任意解除(民法641条、651条)などがある
合意解除(合意解約)当事者の合意によって契約を終わらせること一方的なキャンセルではなく、条件の交渉になる。精算の方法を合意書に書く
取消(民法上の取消)錯誤、詐欺、強迫などによる意思表示を、後から取り消すこと錯誤は民法95条、詐欺・強迫は民法96条。通常の「発注をやめたい」というキャンセルとは別の制度
キャンセル契約上の用語。契約書で定義して使う取消、解除、合意解約のいずれの意味かが条項から読み取れるようにする。キャンセルの時点(着手前・着手後)の定義も書く

この整理から分かるのは、発注者が「発注を取り消したい」と言ったとき、法律上の意味は、①まだ契約が成立していないのであれば撤回(またはそもそも申込みをしていない)、②契約が成立しているのであれば解除または合意解約、のいずれかだということです。「取消」と書いても、民法上の取消(錯誤や詐欺などの場合に限られる)の効果が発生するわけではありません。発注書や請書では、キャンセルの対象となる時点と、その効果(誰が何を負担するか)を、契約書の中で定義するのが、誤解を避ける近道です。

手付・前払金・着手金:受け取った名目と、実質の違い

発注時に一部の金額を先に払う取引は多くあります。手付、内金、前払金、着手金、予約金などと呼ばれます。取消の場面では、この名目が何を意味するかで、返金の可否が変わります。

民法557条は、買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる、と定めています。ただし、相手方が契約の履行に着手した後は、解除できません(同条1項)。また、この手付による解除には、解除に伴う損害賠償の請求を認める民法545条4項の規定が適用されません(同条2項)。つまり、手付を放棄して解除する場合は、手付の額以上の賠償を請求されないのが原則です。

「履行に着手した」とは、一般に、債務の内容である行為の一部を行ったり、履行の提供に欠かせない前提の行為を行ったりしたことと説明されます。具体的に何をもって着手とするかは、取引の事情によるため、着手の目安(たとえば、材料を発注した、制作を開始した)を、あらかじめ書面に書いておくことが、争いの予防になります。

先に払う金銭の名目と、取消の場面での扱い

手付(解約手付)

解除の権利を残すための金銭

  • 買主が放棄、売主が倍額で解除できる(民法557条)
  • 相手が履行に着手した後は使えない
  • 解除による損害賠償は請求されない(同条2項)

前払金・内金

代金の一部を前払いとして支払うもの

  • 契約が解除されれば、原則として返還の対象(民法545条の原状回復)
  • 受注者の実費や出来高に充当する場合は、その旨を書く
  • 返金の可否・返金額の算定方法を書く

着手金・予約金

作業の開始や予約の対価として受け取るもの

  • 返金不可とする場合は、どの対価なのかを具体的に書く
  • 何に対する対価かが曖昧だと、返金の可否が争われる
  • 個人相手では、返金不可の条項が消費者契約法で問題になり得る

同じ金額でも、名目だけで効果は決まりません。当事者が何のために渡したのかという合意の内容で判断されます。契約書に「手付」と書いても、実質が前払金なら、手付の規定ではなく、精算の規定で扱われることがあります。

条文例手付・前払金に関する条項の例(一般的な例)

  1. 発注者は、本契約の成立後、受注者に対し、代金の一部として○円(税込)を前払金として支払う。前払金は、代金の一部に充当する。
  2. 発注者が、受注者が履行に着手する前に本契約を解除した場合、受注者は、すでに受領した前払金から、受注者が負担した実費を控除した残額を返還する。
  3. 受注者が履行に着手した後に本契約が解除された場合、発注者は、受注者がすでにした作業の対価および負担した実費を支払い、前払金はこれに充当する。不足があるときは発注者が不足額を支払い、余りがあるときは受注者が返還する。
  4. 前項の「履行に着手した」とは、受注者が、材料の発注、外部への委託、制作の開始のいずれかを行ったことをいう。

「履行に着手」の定義を置くと、前払金の返金の線引きが明確になります。手付の規定(民法557条)を使うのか、精算の規定を使うのかも、条項の文言から読み取れるようにします。

取消料・違約金の設計:賠償額の予定としての考え方

取消の条項を整える最も一般的な方法は、取消の時期に応じて、取消料や違約金を定めておくことです。民法420条は、当事者が債務の不履行について損害賠償の額を予定できる(1項)としています。賠償額の予定は、履行の請求や解除権の行使を妨げません(2項)。また、違約金は、賠償額の予定と推定されます(3項)。

ただし、取消料を定めるとしても、金額に合理的な説明がなければ、後から争いになります。取消料は、取消によって受注者に生じる損害(すでに支出した費用、確保した人員や設備の機会損失、再手配に要する費用など)を、時期に応じて割り振った額として説明できる形にしておくことが大切です。段階を設ける場合の例を、表にまとめます。

取消の時期に応じた取消料の段階の例

取消の時期取消料の考え方書き方の例
着手前(発注直後)実費がほとんど生じていない時期。取消料はゼロ、または事務手数料程度「着手前の取消は、取消料を要しない」と書く。すでに発生した調査費用があればその実費
準備段階(材料の手配、外注先の確保)すでに支出した実費と、確保した人員・設備の費用「受注者が負担した実費その他の合理的な費用を負担する」。実費の範囲と、証拠書類の提示を書く
制作・作業の途中出来高に応じた対価に、解除に伴う追加費用を加える考え方「すでに完了した作業の対価、および取消によって生じた追加の費用の合計額」。出来高の算定方法を書く
納期の直前・完成後代金の大部分または全額に近い。逸失利益の考慮「代金の○%」のように率で書く場合は、率の根拠を説明できるようにする

書き方の例(一般的な例) 取消・変更の条項を整える

取消の費用負担

よくある書き方「発注の取消には、発注者が費用を負担する」とだけ書く
整えた書き方「受注者が履行に着手する前は、取消料を要しない。着手後は、すでに完了した作業の対価と、受注者が負担した実費その他の合理的な費用を支払う」

理由着手前と着手後で扱いを分け、費用の範囲を限定する。発注者にとっても、負担の予測がつく

取消の方法

よくある書き方取消の方法を書かない
整えた書き方「取消または変更は、書面または電磁的方法により通知し、受注者の承諾を得て効力を生じる」

理由取消の意思表示の方法と、承諾の要否が明確になる

率の書き方

よくある書き方「取消料は代金の全額とする」
整えた書き方「取消の時期に応じ、別表に定める割合の取消料を支払う。別表の割合は、受注者に生じる損害の見込みを基礎とする」

理由全額としても、実際の損害を超える部分は争われ得る。算定の根拠を示す書き方にしておく

事業者間の取引で、取消料が実際の損害を大きく超える場合に、その効力が問題になることがあります。賠償額の予定が著しく過大な場合は、公序良俗(民法90条)や信義則(民法1条2項)の観点から、全部または一部の効力が問題とされる余地があると説明されます。民法420条は予定できる旨を定めていますが、どのような金額でも有効になる、という意味ではありません。金額の根拠を説明できることが、条項の安定性を高めます。

着手後の実費精算と、発注者による変更・受注者の都合

取消のなかでも最も争いになりやすいのは、着手後の取消・変更です。受注者はすでに作業をしており、発注者は、成果が自分の期待に合わなくなったと考えています。多くの契約書で見られる書き方は、「履行に着手した後の取消・変更は、受注者に生じた実費その他の合理的な費用を発注者が負担する」という形です。

条文例着手後の取消・変更に関する条項の例(一般的な例)

  1. 発注者は、受注者が履行に着手する前は、書面または電磁的方法により通知して、発注の全部または一部を取り消し、または変更することができる。この場合、受注者は、取消または変更を理由として費用を請求しない。
  2. 発注者が、受注者の履行の着手後に発注を取り消し、または変更しようとするときは、直ちに書面または電磁的方法により受注者に通知し、受注者の承諾を得るものとする。
  3. 前項の場合、発注者は、受注者がすでに完了した作業の対価、および取消または変更によって受注者に生じた実費その他の合理的な費用を負担する。受注者は、これらの内訳を示す書面を発注者に提出する。
  4. 受注者は、取消または変更に伴い、納期または代金の見直しが必要になる場合は、速やかに発注者にその旨を通知し、協議する。

実費の範囲は「合理的な」という言葉だけに任せず、材料費、外注費、人件費の算定の考え方(単価、時間の記録)を書くと、請求の段階での争いを減らせます。

この種の条項には、2つの注意点があります。1つ目は、承諾を要件にするかどうかです。発注者が一方的に取り消せる定めなのか、受注者の承諾を要する定めなのかで、発注者の自由度が変わります。受注者の承諾を要件にすると、承諾が得られるまで取消の効力が生じないため、受注者に有利ですが、発注者は取消の方法が限られます。2つ目は、実費の「合理的な範囲」の確認方法です。内訳の提出と、発注者の確認の機会を定めておくことで、請求額の説明が容易になります。

発注者の側が、取引の内容によっては、法令上の制約を受ける場合もあります。たとえば、物品の製造・修理や情報成果物の作成を委託する取引で、一定の資本金の規模などの要件を満たす場合は、委託事業者は、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、給付の受領を拒んではなりません(中小受託取引適正化法(取適法)5条1項1号)。発注の取消の結果、すでに作られた成果物の受領を拒むことになる場合は、この規定との関係が問題になり得ます。ここで挙げたのは条文の存在と趣旨にとどまり、取引が対象になるかの判定や、公正取引委員会の運用基準の内容は、原文で確認する必要があります。

個人(消費者)が相手のときのキャンセル料:消費者契約法の枠

取引の相手が個人(消費者)の場合は、取消料の定め方に、消費者契約法の枠がかかります。消費者契約法9条1項1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項で、これらを合算した額が、解除の事由・時期などの区分に応じて、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものについて、その超える部分を無効とすると定めています。

ここでいう「平均的な損害」は、解除の時期ごとに、同種の契約が解除された場合に事業者に生じる損害の平均で考えます。そのため、取消料の定めは、時期の区分ごとに、事業者に生じる損害の見込みに基づいて設定する必要があります。また、事業者は、消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定または違約金の算定の根拠の概要を説明するよう努めなければなりません(同条2項)。

さらに、消費者の利益を一方的に害する条項は、消費者契約法10条により無効になることがあります。「いかなる場合も返金しない」「取消の場合は全額を負担する」といった条項は、この観点から検討されます。事業者間の取引であれば、取消料に消費者契約法は適用されませんが、個人を相手にする取引(個人向けの講座、サービス、物品など)では、この枠を踏まえて、取消料の算定の根拠を準備しておく必要があります。特定商取引法が適用される取引(訪問販売など)には、クーリング・オフなど別の枠組みもあります。

発注後の取消・変更で起きがちなこと

場面別の起きがちなこと

発注書にも見積書にも取消の定めがなかった

起きがちなこと発注者は、キャンセル自体は自由と考え、受注者は、すでに動いた分の費用を請求する。どちらの言い分も、根拠となる書面が弱い

手当て発注書に取消・変更の条項を置く。基本契約がある場合は、基本契約の取消の条項を確認し、発注書の記載と矛盾しないようにする

「内金」を受け取ったが、取消のときの返金が問題になった

起きがちなこと内金が何のための金銭なのか書かれていない。返金の範囲が争いになる

手当て内金・前払金・手付の名目と、取消のときの扱いを、発注書または契約書に書く

着手の事実を示す記録がない

起きがちなこと発注者は着手前の取消と考え、受注者は着手後と考える。着手の時点が証明できない

手当て着手の目安(材料の発注、制作の開始など)を定義する。着手時に、着手した旨をメールで知らせる

発注者の担当者が口頭で内容を変更した

起きがちなこと内容の変更が口頭で行われ、書面が更新されていない。請求の段階で金額が合わない

手当て変更は書面またはメールで確認し、変更後の内容と金額を記載した書類を再発行する

受注者の都合による辞退

起きがちなこと受注者が人員不足などで引き受けられなくなったが、辞退のルールが書かれていない

手当て辞退の申入れの時期、代替手配への協力、すでに受け取った金銭の返還を、あらかじめ書く

取消・変更の条項を整えるチェックポイント

  • 契約の種類(請負・準委任・売買)を意識して、取消・変更の定めを置いたか。
  • 着手前と着手後で、取消の扱いを分けているか。「履行に着手」の定義があるか。
  • 手付・前払金・内金の名目と、取消のときの返金の扱いを書いたか。
  • 取消料の金額は、時期ごとの損害の見込みに基づく説明ができるか。
  • 取消・変更の通知の方法(書面・電磁的方法)と、承諾の要否を書いたか。
  • 個人が相手のとき、取消料が平均的な損害を超えていないか。

取消・変更の条項は、取引が順調なときは出番がありません。そのため、発注書や請書の作成のときには後回しになりがちです。けれども、取引が動き出してから決めようとしても、すでに互いの利害が対立していて、合意しにくくなります。発注書の書き方の段階で、取消・変更の定めを入れておくことが、結果として双方の負担を軽くします。取消をめぐって書類が足りないときの動き方は見積・発注・請求のトラブルとよくある質問で扱っています。

よくあるご質問

発注書にキャンセルの記載がありません。発注を取り消すときは、どうなりますか。

契約の種類で原則が変わります。請負(制作物の完成など)では、完成前ならいつでも損害を賠償して解除できます(民法641条)。準委任(作業の提供など)では、各当事者がいつでも解除できますが、相手に不利な時期の解除などでは損害を賠償します(民法651条)。売買で手付を渡している場合は、相手の履行着手前なら手付で解除できます(民法557条)。いずれも、すでに生じた費用と、解除によって生じた損害の扱いが争点になるため、発注書や契約書にあらかじめ書くのが望ましいとされています。

取消料を定めたいのですが、金額はどう決めればよいですか。

取消の時期ごとに、受注者に生じる損害の見込み(すでに支出した費用、確保した人員や設備の機会損失、再手配の費用など)を割り振る形で設定すると、説明がつきやすくなります。損害賠償の額を予定することは、民法420条1項で認められていますが、金額に合理的な根拠がないと、後から争いになります。個人(消費者)が相手のときは、消費者契約法9条1項1号により、平均的な損害を超える部分が無効になります。

手付を放棄すれば、いつでも契約を解除できますか。

相手方が契約の履行に着手する前に限られます(民法557条1項ただし書)。相手が着手した後は、手付を放棄しても、この方法では解除できません。何をもって着手とするかは、取引の事情によって判断されるため、発注書や契約書に、着手の目安を書いておくと、争いを減らせます。手付による解除では、解除に伴う損害賠償を請求されないのが原則です(同条2項、民法545条4項の不適用)。

着手後に取り消された場合、完成していない作業の分も請求できますか。

契約の種類と条項によります。請負で、完成前の注文者による解除なら、すでに支出した費用などが損害賠償の対象になり得ます(民法641条)。可分な部分の給付で注文者が利益を受けるときは、その部分を完成とみなして、利益の割合に応じて報酬を請求できる場合もあります(民法634条)。準委任なら、履行の割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項)。条項に「実費その他の合理的な費用を負担する」と書いてあれば、その範囲で請求します。内訳を示す資料を残しておくことが重要です。

前払金は、取消のとき必ず返金しなければなりませんか。

前払金が代金の一部としての前払いであれば、契約が解除されたとき、原則として原状回復として返還の対象です(民法545条)。ただし、すでに行った作業の対価や、負担した実費に充当する旨の合意があれば、その範囲で控除されます。「返金不可」と書いてあっても、何に対する対価なのかが曖昧であったり、個人(消費者)相手で金額が平均的な損害を超えたりする場合は、その効力が問題になります。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の内容ややり取りの経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の取引や事業者を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 公正取引委員会 / 中小企業庁

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