このページの要点
- 請書は承諾を書面にしたもの。契約の成立に書面は原則として要らず(民法522条)、請書がなくても承諾があれば成立し得る。
- 注文書に変更を加えた請書は、承諾ではなく新たな申込みになる(民法528条)。発注者の承諾が得られるまで成立しない扱いになり得る。
- 返事をしないことは原則として承諾にならない。例外は、承諾の通知が不要な場面(民法527条)と、商人間の平常取引(商法509条)。
- 請書には、注文書の特定、承諾の文言、内容・金額・納期、相違点の明示を書く。請負では完成の範囲と報酬の確定に意味がある。
結論:注文請書は「承諾した」という事実と「何を承諾したか」を残す書類。契約成立の絶対条件ではない
注文書(発注書)を受け取った側が、「その内容で引き受けます」と書いて返す書類が注文請書です。請書、注文承諾書、受注確認書などの名前で呼ばれることもあります。取引のたびに請書を取り交わす会社もあれば、発注書をメールで受け取り、「承知しました」と返信するだけの会社もあり、実務の運用は分かれています。
法律の側から先に整理しておくと、契約は、一方が契約の内容を示して締結を申し入れる意思表示(申込み)をし、相手方がこれに承諾をしたときに成立します(民法522条1項)。契約の成立に、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式は要りません(同条2項)。したがって、請書がなくても、承諾の意思表示がなされたといえれば契約は成立し得ますし、反対に、請書という書類を返したからといって、その内容で何でも成立するわけでもありません。請書の役割は、成立そのものを作り出すことよりも、承諾の事実と承諾した内容を、後から確かめられる形にしておくことにあります。
このページでは、注文書と請書の関係、請書を取る運用と取らない運用の違い、条件を付けて返した請書の扱い、無言や着手による承諾の問題、請書に書く項目、請負で請書を取る意味を順に整理します。要点は次のとおりです。
- 請書は、申込みに対する「承諾」を書面にしたもの。注文書の内容と一致していれば、その内容で契約が成立したことを示す書類になる。
- 請書に条件を付けたり内容を変えたりして返すと、法律上は「承諾」ではなく、新たな申込みとして扱われる(民法528条)。
- 返事をしないこと自体は、原則として承諾にならない。例外として、商人間の平常取引では諾否の通知を怠ると承諾したものとみなされる場面がある(商法509条)。
- 承諾の通知が要らない場面では、承諾の意思表示と認められる事実(着手など)があった時に契約が成立する(民法527条)。
- 請負では、請書で「どこまでをもって完成か」と「報酬」を確定させておく意味が大きい。
書類全体の位置づけは見積書・発注書・請求書の役割と契約の流れで、契約の成立時点そのものは契約はいつ成立するかで扱っています。ここでは請書という一つの書類に絞って掘り下げます。
注文書と請書の関係:誰が「申込み」で、どこが「承諾」になるのか
見積書、注文書、請書は、典型的には次の順に流れます。受注者が見積書を出し、発注者が見積書の内容を前提に注文書を出し、受注者が請書で応じる、という流れです。ところが、この流れの中のどの書類が「申込み」で、どの書類が「承諾」なのかは、書類の名前だけでは決まりません。
見積から請書までの典型的な流れと、法律上の位置づけ
見積書が申込みで注文書が承諾になる場合は、請書がなくても契約は成立し得ます。見積書の位置づけは見積書は申込みか、有効期限を過ぎたらどうなるかで整理しています。
たとえば、見積書がそのまま「この内容で引き受けます」という申込みにあたり、発注者が内容を変えずに注文書を出したのであれば、注文書が承諾にあたり、その時点で契約は成立していると整理できる場合があります。この場合、その後に請書を返すことは、成立済みの契約の内容を確認する書類になります。これに対して、見積書が単なる案内にとどまり、発注者が自分の条件で注文書を出したのであれば、注文書が申込みで、受注者の請書または着手が承諾になります。
どちらの整理になるかによって、請書を返す時点が契約の成立時点になるのか、確認にとどまるのかが変わります。実務では、ここを曖昧にしたまま運用している例が多く見られます。書類の運用を決めるときは、「この取引では、どの書類が申込みで、どの行為が承諾なのか」を一度言葉にしておくことが出発点になります。基本契約がある取引では、基本契約の中に「個別契約は注文書に対する請書の送付で成立する」「注文書の送付後一定の期間内に拒否の通知がなければ成立する」といった成立の条項を置いて、この整理を契約上で決めておく方法が多くの契約書で見られます。
注文書と請書の組み合わせ方
注文書だけで進める
請書は取らず、注文書の送付と受注者の返信・着手で進める運用
- 手間は少ない
- 承諾の時点と内容が曖昧になりやすい
- 受注者が「承知しました」とメールで返す運用が多い
請書を必ず取る
注文書の後に受注者が請書を返してはじめて成立とする運用
- 成立の時点が明確
- 請書の到着待ちで着手が遅れうる
- 請書が戻らないまま着手する例外運用が起きやすい
請書を取る場面を絞る
一定の金額や期間を超える取引、請負の取引だけ請書を取る運用
- 手間と確実さの両立
- 線引きを社内で決めておく必要がある
- 線引きの文書化が運用の鍵
運用そのものは当事者が自由に決められます(民法521条)。大切なのは、決めた運用を実際に守ることと、基本契約や発注書の文面と食い違わせないことです。
請書を取る運用と、取らない運用の違い
請書を取らない運用が悪いわけではありません。小さな取引や、繰り返しの多い取引では、請書を取り交わす手間のほうが大きいと考える会社も多く、メールやチャットでの確認で足りる取引も数多くあります。ただし、請書があるのとないのとでは、次のような違いが出ます。
請書を取る運用と取らない運用の比較
| 比べる点 | 請書を取る運用 | 請書を取らない運用 |
|---|---|---|
| 成立の時点 | 請書が相手に届いた時(民法97条1項)と整理しやすい | メールの返信や着手など、どの行為が承諾かを後から検討することになる |
| 内容の確認 | 受注者が内容を読み、確認したことが書面に残る | 注文書の内容を受注者が確認したかどうかは、返信の文面や作業の経過から推し量ることになる |
| 条件の相違 | 請書の段階で食い違いが表に出る | 着手後や請求の段階で食い違いが見つかる例がある |
| 手間 | 書類を作って送る手間が増える | 手間は少ない |
| 向く取引 | 請負、金額や期間の大きい取引、初めての取引 | 少額で繰り返す取引、基本契約の中で成立の条項が整っている取引 |
請書を取らない運用を選ぶ場合に外せないのは、承諾にあたる行為を何にするかを決めておくことです。たとえば「注文書をメールで受け取ったら、その日のうちに『承知しました』と返信する」「返信がない場合は着手前に確認を入れる」といった運用が考えられます。返信という行為が承諾の記録になり、同時に、注文書の内容を確認したことの記録にもなります。
請書を取る運用を選ぶ場合は、請書の様式をあらかじめ用意しておき、受注者が内容を書き換えずに返せる形にしておくと、条件を変えた請書が返ってくる事態を減らせます。注文書の下半分に承諾欄を設け、署名または記名のうえ返送してもらう一体型の様式も、実務で広く使われています。注文書と請書の様式をそろえておけば、2つの書類を並べて突き合わせる手間も省けます。注文書の側の書き方は発注書(注文書)の書き方で扱っています。
条件を付けた請書は「新たな申込み」になる
請書で最も多い行き違いは、請書に何かを書き足して返した場合の扱いです。民法528条は、承諾者が申込みに条件を付け、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす、と定めています。つまり、注文書の内容に変更を加えた請書は、承諾ではなく、注文書に対する「お断り」と「こちらの条件での新たな申込み」になります。そのため、契約はまだ成立しておらず、発注者がこの新たな申込みを承諾して初めて成立します。
ここに落とし穴があります。受注者は、請書に条件を書き足して返したことで、契約が成立したと考えて着手します。発注者は、請書の細部を読まないまま、請書が来たので成立したと考えます。両者の間に書き足された条件についての合意は、実は存在していないのに、仕事だけが進みます。後で条件が問題になったとき、「承諾したことになるのか」「着手によって新しい申込みを承諾したことになるのか」が争いになります。
書き方の例(一般的な例) 請書に条件を書き足して返すとき
納期の書き換え
理由納期は契約の中心的な条件で、変更を加えた承諾は新たな申込みになる(民法528条)。発注者が見落とすと、合意の有無が後で争いになる
金額の書き換え
理由金額の変更は、注文書に対する拒絶と新たな申込みになる。この段階で着手すると、金額の合意がないまま作業が進む
約款の添付
理由裏面の条件が契約の内容になるかは、合意の有無と、民法548条の2(定型約款)の枠組みで検討することになる。書類同士の食い違いは見積書・発注書・契約書の内容が食い違うときで整理している
条件を付けること自体が悪いのではありません。受注者として、どうしても譲れない条件があるときは、それを明示して返すのが誠実です。大事なのは、条件を付けて返した時点では、まだ契約は成立していないと認識し、発注者の返事を確認してから着手することです。発注者の側も、請書が返ってきたら、まず注文書との相違がないかを確認します。
条文例注文請書の文例(一般的な例)
- 当社は、貴社が発行した注文書(注文番号○○、発行日○年○月○日)の記載内容を確認し、その条件のとおり、注文を承諾いたします。
- 本請書において注文書の記載事項に変更を加える場合は、その旨を別紙に明示し、貴社の書面または電磁的方法による承諾を得るまでは、本請書は承諾の効力を生じないものといたします。
- 本請書の内容と注文書の内容が異なる場合は、注文書の記載を優先するものといたします。ただし、貴社が本請書の相違点を書面または電磁的方法により承諾した場合は、この限りではありません。
請書の文例の例示です。基本契約がある取引では、基本契約の個別契約の成立条項との関係(どちらが優先するか)をあわせて確認します。
無言・着手による承諾:返事をしなかった、作業を始めた、は承諾か
請書も返信もないまま、受注者が作業に取りかかる場面は珍しくありません。この場合に契約が成立しているかは、2つの条文を分けて考えると整理しやすくなります。
1つは民法527条です。申込者の意思表示または取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する、と定めています。注文書に「承諾のご連絡は不要です。ご対応いただける場合はそのまま着手してください」と書かれている場合や、その業界の慣行として注文に対する個別の承諾通知を出さずに納品する運用が定着している場合には、受注者の着手や発送といった事実が承諾の意思表示と認められ、その時点で契約が成立する余地があります。逆に、承諾の通知が必要な取引で、通知を出さずに着手しただけでは、成立したといえるかは事情によります。
もう1つは商法509条です。商人が平常取引をする者から、その営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず(1項)、これを怠ったときは、その申込みを承諾したものとみなされます(2項)。ただし、この規定が働くのは、商人が、平常取引をしている相手から、自分の営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合に限られます。取引が初めての相手や、営業の部類に属さない契約には、そのままは当てはまりません。基本契約のもとで個別契約をどう成立させるかという問題は、別のガイドで扱っていますので、ここでは、請書を返さなくても承諾とみなされる場面が法律上あり得ること、ただし限られた場面であることを押さえておけば足ります。
これらの規定の例外を除けば、返事をしないこと(沈黙)は、原則として承諾にはなりません。個人(消費者)に対しては、一定の期間内に拒否の通知がなければ承諾したものとみなす、という条項を設けても、消費者契約法10条により無効とされる場合があります。事業者間でも、「一定期間内に返事がなければ承諾とみなす」という一方的な宣言を注文書に書くだけでは、相手がその条件に合意していることを示す材料がなく、成立が争われやすい書き方です。この点は契約はいつ成立するかで、場面別にさらに整理しています。
場面別:請書の有無と承諾の見られ方
| 場面 | 承諾と見られやすいか | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 請書が内容を変えずに届いた | 承諾と見られやすい | 請書が届いた時に成立(民法97条1項)。内容が注文書と一致しているかを確認する |
| 請書が届かず、メールで「承知しました」と返信があった | 承諾と見られやすい | 返信の文面が、内容を確認して引き受ける趣旨かどうか。「確認しました」だけでは受領の確認にとどまる余地がある |
| 請書も返信もなく、受注者が着手した | 承諾の通知が不要な取引なら見られる余地がある(民法527条) | 注文書の記載、過去の取引の慣行、基本契約の成立条項を確認する |
| 請書に条件が書き足されていた | 承諾ではなく新たな申込みと見られる(民法528条) | 発注者が書き足された条件を承諾したかどうか。承諾していなければ、成立していない |
| 商人の間の平常取引で、返事をしないまま期間が過ぎた | 承諾したものとみなされる場合がある(商法509条) | 商人であるか、平常取引といえるか、営業の部類に属する契約かを確認する |
請書に書く項目と、注文書との整合の確認
請書の書き方は難しくありません。肝心なのは、「注文書のどれを承諾したのか」が一目で分かること、そして、注文書の内容をそのまま写して間違えないことです。次の表は、請書に入れる項目の一般的な例です。
注文請書の記載項目(一般的な例)
宛名・日付・差出人
発注者の名称、請書を出す日付、受注者の名称と担当者
日付は意思表示が到達する時点の判断材料になる。電子的に送る場合は送信日時も記録に残る
注文書の特定
承諾の対象とする注文書の番号、発行日、件名
見積書番号も併記すると、見積書から注文書、請書へのつながりが分かる
承諾の文言
「記載の内容で注文を承諾します」
「確認しました」「受領しました」では、受領の確認にとどまるおそれがあるため、承諾の趣旨を明確にする
内容・数量・金額
注文書と同一の内容を書く。金額は税込か税別かを明記する
写し間違いを避けるため、注文書の記載をそのまま転記するか、注文書を添付して引用する
納期・納入場所・検収
注文書記載の納期、納入場所、検収の方法
納期の幅や未定の部分があれば、その旨とその決め方を書く
支払条件
支払期日、支払方法、振込手数料の負担
注文書の記載との一致を確認する。支払期日の書き方は支払期日と支払の遅れで扱っている
相違点の明示
注文書の記載と異なる点がある場合は、別紙で明示し、承諾が得られるまでは承諾の効力を生じないことを書く
相違点を請書の本文に紛れ込ませない
基本契約との関係
基本契約に基づく個別契約であること、基本契約の名称と日付
基本契約と請書の優先関係を定めている場合は、その旨と整合させる
金額の例は「○円(税込)」のように、税込か税別かのいずれかを書きます。
確認の問いと理由請書を返す前の確認の問い
注文書の内容と、請書の内容は、一字一句そろっているか
数量、金額、納期、納入場所のうち一つでも異なれば、請書は承諾ではなく新たな申込みになる可能性があるため。
注文書に書かれていない条件を、請書に足していないか
足した条件は新たな申込みの内容になり、発注者が承諾するまで契約が成立しない扱いになり得るため。
見積書の前提条件や除外事項は、注文書の中に引き継がれているか
見積書で外した費用が注文書にはなく、請書でそのまま承諾すると、除外事項が契約の内容から抜け落ちるおそれがあるため。
基本契約がある場合、請書の様式や成立の条項は基本契約と食い違っていないか
基本契約に個別契約の成立時点が書かれていれば、請書の効力はそれと整合させる必要があるため。
請書を送った記録(送信日時、宛先、添付ファイル)を残しているか
到達の事実と送った内容は、成立時点と内容を説明するときの手がかりになるため。
請負で請書を取る意味:完成の範囲と報酬を確定させる
請書は売買でも請負でも準委任でも使われますが、とくに請負では、請書を取る意味が大きくなります。請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することで成立します(民法632条)。報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に支払うのが原則です(民法633条)。仕事の完成が報酬の前提になる以上、「何ができあがれば完成なのか」「その報酬はいくらか」が曖昧なまま着手すると、完成したかどうか、報酬がいくらかを巡って争いになります。
請書を通じて、受注者が「注文書記載の仕事を完成して引き渡すこと」を明確に承諾し、あわせて報酬額が確定するのであれば、その後の追加や変更は、変更の合意があって初めて報酬が動くものと整理しやすくなります。注文者は、請負人が仕事を完成しない間は、いつでも損害を賠償して契約を解除できます(民法641条)。請書で契約が成立した時点が明確であれば、「どの時点から、この解除の規定の対象になるのか」も明確になります。発注後の取消の考え方は発注後のキャンセル・内容変更・取消料で扱っています。
準委任(事務の処理を委託する契約)の場合は、仕事の完成を約束しないため、請書で確定させるべきなのは、作業の範囲、報酬の算定方法、期間、報告の方法です。成果物の完成を約束するのか、作業の提供を約束するのかを、請書の文面から読み取れるようにしておくと、後の請求の場面でも話が早くなります。
なお、取引の相手が一定の規模の事業者で、製造や情報成果物の作成などを委託する取引では、委託する側(委託事業者)に、給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを書面または電磁的方法で明示する義務があります(中小受託取引適正化法(取適法)4条1項)。この義務は発注する側が負うもので、受注者が請書を返したことによって代わりに果たされるとは、条文には書かれていません。取引が取適法の対象になるかの判定は別のガイドで扱います。ここでは、請書は発注側の法令上の義務を肩代わりする書類ではない、という点だけ押さえておきます。
請書をめぐって起きがちなこと
実務でよく見られる行き違いを、場面ごとに整理します。
請書をめぐる場面別の起きがちなこと
請書を返さないまま作業が進んだ
起きがちなこと発注者は作業が進んでいるので成立したと考えるが、受注者は請書を出していないから未成立と考える。途中で条件の相違が見つかり、どちらの条件で成立したかが争点になる
手当て着手の前に、メール一通でも承諾の趣旨を返す運用にする。基本契約があれば、成立の条項を確認し、請書を取らない取引でも、承諾にあたる行為を決めておく
請書に書き足した条件が見落とされた
起きがちなこと受注者が請書の備考欄に条件を足したが、発注者の担当者が読まないまま保管した。後で条件の効力が問題になる
手当て条件の追加は請書の本文に紛れ込ませず、別紙で明示して、発注者の承諾の返信を得てから着手する
請書の内容が注文書と違っていた
起きがちなこと金額や数量の転記ミスで、請書と注文書が一致していない。どちらで成立したのかが分からない
手当て請書の作成時に注文書と突き合わせる確認を設ける。相違が見つかったら、訂正した請書を再発行し、訂正前の請書を取り消す旨を書く
請書の様式が、基本契約の成立条項と合っていなかった
起きがちなこと基本契約には「請書の送付で個別契約が成立する」とあるのに、実際は注文書だけで進めている。どちらの運用が正しいのかが曖昧になる
手当て契約書の条項と実際の運用を合わせる。運用を変えるなら、基本契約の方を書き換える
請書の運用で外せない点(まとめ)
- 「どの書類が申込みで、どの行為が承諾か」を、取引ごと、または基本契約の中で決めておく。
- 請書を取る取引と取らない取引の線引きを、金額や契約の種類で決めて、社内で共有する。
- 請書に条件を足すときは、別紙で明示し、相手の承諾を得てから着手する。
- 請書の内容は、注文書をそのまま写し、写したあとに突き合わせて確認する。
- 請書を出した記録(送信日時、宛先、添付ファイル)を残す。
請書は、契約の成立を決定づける魔法の書類ではなく、承諾した内容を確かめるための道具です。使うか使わないか、使うならどう書くかを、取引の性質に合わせて決めておけば足ります。成立の時点そのものの整理は契約はいつ成立するかに、書類の食い違いは見積書・発注書・契約書の内容が食い違うときに続きます。
よくあるご質問
注文請書は必ず取らなければなりませんか。
法律上は必須ではありません。契約は、申込みに対する承諾があれば成立し、書面の作成は原則として要りません(民法522条)。ただし、請書がない場合は、承諾の時点と内容を別の記録(メールの返信など)で確かめられるようにしておく必要があります。基本契約で請書の送付を成立の条件にしている場合は、その定めに従います。
注文書に「請書は不要です」と書かれていた場合、請書を出さなくても契約は成立しますか。
申込者である発注者が請書(承諾の通知)を不要としている場合には、承諾の意思表示と認められる事実があった時に契約が成立する余地があります(民法527条)。具体的にどの行為が承諾と認められるかは、注文書の文面と取引の経過によります。着手の前に、一言でも承諾の返信を入れておくと、時点と内容が確かめやすくなります。
請書の備考欄に、納期の注意書きを書き足して返しました。契約は成立しましたか。
書き足した内容が注文書の条件を変更するものであれば、承諾ではなく、新たな申込みとみなされる可能性があります(民法528条)。その場合は、発注者が書き足された条件を承諾した時点で成立する、という整理になります。書き足しが単なる情報提供で、契約の条件を変えるものではないといえる場合は別ですが、迷うときは、注文書の内容どおり承諾する請書と、条件についての別の連絡を分けて出しておくと、後で整理しやすくなります。
請書を返さずにいたところ、そのまま承諾したことになると言われました。本当ですか。
返事をしないこと自体は、原則として承諾にはなりません。例外は、商人が平常取引をする者から営業の部類に属する契約の申込みを受けたのに、遅滞なく諾否の通知を発しなかった場合で、この場合は承諾したものとみなされます(商法509条)。これに当たるかは、相手との取引の関係と契約の内容で判断されます。取引基本契約に、一定の期間内に拒否の通知がなければ承諾とみなす旨の定めがあれば、その定めも確認が必要です。
請書をPDFにしてメールで送るだけでも有効ですか。
契約の成立に書面の作成その他の方式は要らないため(民法522条2項)、PDFにしてメールで送る方法でも、承諾の意思表示として有効に働き得ます。承諾の効力は、そのメールが相手に到達した時に生じます(民法97条1項)。保証契約のように、法令が書面や方式を求める契約は別です。送信日時、宛先、添付したファイルの内容を保存しておくと、承諾の時点と内容を説明しやすくなります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、取引の内容ややり取りの経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の取引や事業者を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 公正取引委員会 / 中小企業庁