仕事の多くは、契約書を交わす前に、見積書・発注書・注文請書・納品書・請求書といった書類のやり取りで進みます。ところが、どの書類が「申込み」でどの書類が「承諾」なのか、メールやチャットでの返事で契約は成立するのか、見積書の有効期限を過ぎたらどうなるのか、請求書が届かないと支払期日は来ないのか、といった点は書類に書かれていないことが多く、争いになってから初めて問題になります。このガイドは、業種を問わず、書類の役割と契約の成立時点、見積書と発注書の書き方、有効期限と撤回、概算見積と最終の請求額、発注後のキャンセル、請求書の記載と支払期日・遅延、納品書と検収書の使い分け、書類同士の食い違い、書類の保存、トラブルのときに集める材料までを、条文と書き方の例で整理した解説集です。税の取扱いは扱いません。

書類の役割が分からない方

ノートの上に置かれたペン

どの書類が申込みで、どの書類が承諾か

見積書、発注書、注文請書、納品書、検収書、請求書は、契約の成立に関わる書類と、履行や請求に関わる書類に分かれます。契約書がなくても契約は成立しますが、条件は書類に残ります。

基本契約があるかないかで、書類の流れも変わります。まず全体の地図を持ってから、個々の書類の書き方に進みます。

見積書を出す・受け取る方

グラフが映るノートパソコン

書き方、有効期限、概算の扱い

見積書には、項目と金額のほか、前提条件、除外事項、有効期限、税込・税別を書いておきます。「一式」や「概算」と書いたときに、最終の請求額とどう関わるかも決まります。

見積書が申込みか申込みの誘引かは、記載と経緯で決まります。期限を過ぎた発注や、見積後の値上げの問題も、民法の条文から整理できます。

発注・受注の成立を確かめたい方

ノートパソコンを見ながら話し合う二人

メール・チャット・着手で契約は成立するか

契約は申込みと承諾が合致すれば成立し、書面は原則として要りません。メールやチャットの返事、着手、電子契約サービスの承認が、いつ承諾になるかを整理します。

注文請書を取るか取らないか、条件を付けた請書や条件を変えた発注書が新たな申込みになる点も、場面ごとに確かめます。

発注後のキャンセルや変更で悩む方

数値とグラフが表示されたモニター

取消料、手付、着手後の実費

発注を取り消したいとき、取り消されたとき、書類に取消の条項がなければ、請負か準委任か売買かによって民法の扱いが分かれます。

取消料や違約金を書くときの考え方、着手後の実費の積み上げ方、個人が相手のときの注意も、一つずつ整理します。

請求書と支払の遅れで悩む方

数値とグラフが並ぶ画面

請求書の書き方、支払期日、遅延損害金

請求書に何を書けば支払ってもらえるか、請求書がないと払ってもらえないのか。請求書の役割と、記載事項、振込手数料の負担、訂正の仕方を整理します。

支払期日の定め方によって、遅滞の時期や遅延損害金の起算が変わります。催告と時効の完成猶予の仕組みも確かめます。

書類が食い違う・残っていない方

指標の数値が並ぶ画面

どの書類が優先するか、何を手元に集めるか

見積書は五十万円、発注書は四十五万円というように、書類の内容が食い違うことがあります。承諾の内容が変わると新たな申込みになる、という整理から入ります。

書類が残っていないときに使える材料の集め方、保存の期間と方法も確かめます。

このガイドの解説ページ

よくあるご質問

契約書がなくても、見積書と発注書だけで契約は成立しますか?

成立し得ます。契約は申込みと承諾が合致すれば成立し、原則として書面は要りません。見積書を申込み、発注書を承諾と整理できる場合もあれば、発注書が申込みで、請書や着手が承諾になる場合もあります。どの書類がどの役割かは書類の記載ややり取りの経緯で決まるので、書類に条件を残しておくことが大切です。

見積書の有効期限を過ぎてから発注が来たら、どうなりますか?

期限を過ぎた承諾は、新たな申込みとみなすことができます。受けるかどうかは受注者の自由で、金額や条件を改めて示してかまいません。有効期限を書かなかった場合も、相当の期間が過ぎれば承諾できなくなる場合があります。期限は、見積書に日付で書いておくと迷いません。

発注後にキャンセルしたいとき、取消料は払わなければなりませんか?

書類に取消の条項があればそれに従い、なければ契約の種類ごとに民法の扱いが分かれます。請負では注文者がいつでも損害を賠償して解除でき、準委任では各当事者がいつでも解除できます。履行に着手した後は、かかった実費などの負担が問題になります。取消料を決めるときは、実際の損害に見合う額かどうかも見ます。

請求書が届かないと、支払期日も来ないのでしょうか?

期限の定め方によります。確定した日付が定められていれば、請求書がなくても期日は来ます。一方で「請求書の受領後○日」と書いた場合は、請求書が届いた時から数えるため、請求書の発行が遅れるとその分だけ後ろにずれます。請求書の提出を支払の条件にするなら、いつまでに出すかも決めておきます。

見積書・発注書・請求書は、どのくらいの期間保存すべきですか?

商人や株式会社には、帳簿と事業に関する重要な資料を十年間保存する義務があります。契約書類がこれに当たるかは書類の性質によります。また、代金の請求権は一定の期間で時効にかかるので、立証のために請求の権利がある間は保存しておくのが安全です。税務上の保存の要件は、このサイトでは扱いません。

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監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月22日